日本でARCC エイリスキャピタルや米国REITリートを買えない理由

はじめに

日本の証券会社が相次いで米国BDCの新規買い付けの受付を停止しましたが、その原因は「外国投資信託・外国投資法人届出制度」に則った届け出がされていないことです。

ARCC、PSEC、HTGCなどの米国BDCだけではなく米国リートも日本では買えません。本当は米国の個別リートが欲しいものの、日本では買えないので代わりにSPYDを買ったり、米国リートを入れた日本籍の投資信託を買っている人も多いと思います。なぜ米国の上場株やETFは売買できるのに、同じように上場されているBDCやREITは売買できないのでしょうか?

原因になっている「外国投資信託・外国投資法人届出制度

どういう趣旨の制度なのか調べてみました。

法律を作っているのは金融商品取引法研究会?

公益財団法人日本証券経済研究所のサイトに金融商品取引法研究会という会の活動が掲載されています。会の目標が次の通り掲載されています。

当研究会は、金融商品取引法制に関連する最近の法的諸問題について、法学者のほか、金融庁の担当部局者、実務家等の参加も得て、法制立案、法律解釈及び法律実務上の観点から検討・討議を行っている。また、その記録を『金融商品取引法研究会研究記録』としてその都度発刊するとともに、ホームページにも全文掲載している。

公益財団法人日本証券経済研究所

法律は国会で国会議員が作っていると思っている人が多いですが、現実にはこういうところに法学者、お役人、業界の代表が集まって実質的な議論を深め、役所が原案を作っています。国会議員はそのあとで、役人の振り付けにしたがって法案を国会で通すわけです。

業界代表の人は役人に気をつかいますが、学者は案外率直に発言します。もともとお役人の先生だったり、先輩だったりする人たちですから。

外国投資信託・外国投資法人届出制度

東京大学大学院客員教授・弁護士 松尾 直彦氏の発言

 平成31年1月29日、松尾氏が「投資信託・投資法人関連法制に関する問題意識について」話しています。このとき「外国投資信託・外国投資法人届出制度」に言及していますので、その部分を引用します。長くて解りにくいので、面倒だと思う方は、太字やマーカー部分をさっと眺めて、後続の「昭和課長の勝手な翻訳」を読んでみて下さい。

.外国投資信託・外国投資法人届出制度

平成 18 年の私の担当のときに、外国投資信託と外国投資証券の「募集の取扱い等」、「等」なので私募や私募の取扱いも入るんですが、事前届出免除制度を導入しました。対象になっているのは、東京証券取引所に上場している ETF などです。

海外に上場されている、例えばOECD 加盟国の取引所に上場されている外国投資信託の受益証券についての適用除外には限界がありまして、それが 10 ページの5です。何でこの届出制度が設けられたかというと、私が担当したときの金融庁のパブコメ回答に、国内において流通する場合には、投資者保護を図る観点から当局が実態を把握する必要があるため、発行者に求めることになるとあります。

これはわからないでもありません。ただ、(2)にあるように届出義務の適用除外制度を 18 年改正のときに設けて、今は例外が3つあります。①と②は私のときに対応して、③は平成 20 年6月改正で追加されたものです。

外国の取引所上場のものについては、ありていに言うと、証券会社が適格機関投資家を相手方とする場合には届け出をしなくていいということです。ただ、外国上場のものであっても、REIT については例外になっていません。当時、私が担当していたときも、REIT がまだ導入されたばかりのころで、ちょっと個別性が強いということで、要望はあったんですけれども適用除外にしませんでした。この考え方が平成 20 年6月改正のときも維持され、いまだに変わっていないということです。しかし、政令や内閣府令事項にしたのは機動的に改正できるようにするためで、私としては、時代の変化に応じてどんどん改正してほしいと思っております。

注 43 で、外国上場でない外国投資信託も適用除外してほしいということについては、平成 20 年改正のときに、一般投資家へ流通する可能性もあるということで適用除外とされていません。これが、さっきも言ったようにコストがかかるんですね。なぜかといいますと、一旦届け出をすると、12 ページの(3)にあるように、発行者には運用報告書の作成義務及び「知れたる受益者」への交付義務があるからです。ただ、「知れたる受益者」というのは、発行者はわかりません。販売業者にしかわかりませんから、発行者が日本語の運用報告書をつくり、証券会社を通じて交付する。そうすると、実務で何が起きているかというと、証券会社にとっては手間がかかり、人気のないもの、コストのかかるものは余り販売してくれないということになります。それは証券会社からしたら当然のことです。また、ここには書いていませんが、コストばかりかかって日本の投資家が全然ふえないからやめたいと思っても、一旦届出をしたら、やめる制度がないという問題もあります。「知れたる受益者」が1人でも残っていれば続けるということですから、これは発行者にとって負担が重いです。逆に、理由はわかりませんが、外国投資法人は運用報告書の作成・交付義務がなぜかありません。

外国投資信託受益証券については、日本ではなかなか流通しないので、実際には、日本の投信会社が日本の投信としてつくって外国の運用会社に委託するという仕組みで流通しています。10 ページに戻って、上から4行目に「アジア地域ファンド・パスポート」とありますけれども、私にとっては期待外れで、これに合わせて法令改正されるのかと思ったら、投信法の外国投資信託の届出制度は変わっていません。つまり、日本に外国投資信託を持ち込むに当たっては、外国投資信託の届出をした上で、アジア地域ファンド・パスポートの対象になるための要件がいろいろあって結構厳しい。ですから、外国投資信託については、日本に持ち込むメリットはありません。私の理解では、日本の投資信託を海外に輸出する、産業立国的な発想でできている制度だと思います。この制度をつくるときに、届出を免除するのかなと期待していたんですが、そうではないということで失望しました。もっと言えば、

もし届出制度を続けるのであれば、特に外国上場物、具体的には、私、シンガポール取引所の代理人をやっているので、あえて言いますけれども、外国上場の REIT、これは為替リスクがあるものの利回りが高いので、いい商品だという話なんですが、実際は障害になっています。日本の投資家は買えません。といいますか、届出制度があるので、証券会社が販売対象にするのに困難があるんです。ですから、届出制度を残すのであれば、英文の目論見書を、翻訳なしでそのまま受け付けてほしい。

なぜなら、これは単に届け出で、公衆縦覧開示じゃないからです。昔、この制度の見直しを検討するとき、部下に「関東財務局から取り寄せてくれ」と言って、私、見たんですけれども、関財に積んであるだけか、確かに無駄だなと思って緩和しました。緩和の要望もありました。ですから、もうちょっと緩和してくださいというのが実務家の要望です。私の根本的な疑問は、なぜ投資信託の受益証券が開示制度の対象になっているのかということです。業者規制で十分じゃないか。理由は、投資家は誰も EDINET を見ないからです。アナリストは、証券市場に影響を与えるということで見るんですかね、ETF とか。見るのかもしれませんが、その辺は後で大崎先生にお話しいただければと思います。

松尾氏の発言の要点(勝手な翻訳)

教授は多岐に渡って発言されていますが、米国BDCとREITに関連する部分を要約してみました。

私が法案作りを担当していたとき「届け出制度」を導入しましたが、「届け出免除」という抜け道も作りました。

その当時から外国上場REITを「届け出」が無くても買えるようにしてほしいという意見がありましたが、当時はREITの出始めだったので、「届け出免除」するのは見送りました。

いまだにこのとき作ったルールが変わっていません。

このルールは、国会通さなくても政令や内閣府令で変えられるようにしたので、時代の変化に応じてどんどん変えてほしい。外国上場REITも「届け出免除」していいと思っている。

外国上場の REITは為替リスクはありますが、利回りが高くていい商品。それなのに今のままでは日本の投資家は買えません。「届出制度」があるので証券会社が販売対象にするのに困難があるんです。「届出制度」を残すなら、手続きをもっと簡単にして、取引できるようにした方が良い。

まとめ

どうやら無駄な「届け出制度」が邪魔になってるということですね。

もともと法令の作成に携わっていた学者も、日本の投資家が米国REITを購入できるようにした方がよいという考えを表明しています。

ちなみに、この研究会のオブザーバーは次の通りです。

オブザーバー三 井 秀 範東京大学大学院法学政治学研究科特任教授
太田原 和 房金融庁企画市場局市場課長
岸 田 吉 史野村ホールディングス執行役員
森   忠 之大和証券グループ本社経営企画部担当部長兼法務課長
森   正 孝SMBC日興証券法務部長
田 中 秀 樹みずほ証券法務部長
窪   久 子三菱UFJモルガン・スタンレー証券法務部長

伝統的な大手証券会社がメンバーにいますが、ネット証券さんはいません。大手証券は自社系列の会社で作った日本籍の米国BDC投資信託とか米国REIT投資信託を高い信託報酬をとって販売しています。なので、米国上場の外国投資信託や外国投資法人の銘柄を積極的に取り扱いたいというインセンティブに欠けるのかもしれません。しかし松尾教授はREITを販売したい証券会社の立場を代弁している感じもします。誰がどういうポジショントークをしているのかは、部外者にはちょっとわかりませんね。

RREITは、金融庁が政令・内閣府令で届け出制の適用を除外できるとのこと。時代に合わせてどんどん変えるよう松尾教授が指摘していますので、そのうち取引可能になるかもしれません。期待したいと思います。

免責事項

写真はイメージです。日本証券経済研究所や松尾教授とは無関係です。また、当方の法令解釈等に誤りがあっても責任は負いません。

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