ペインクリニック(星状神経節ブロック療法)の創始者 若杉文吉先生の治療体験

日本のペインクリニックの創始者と言われる若杉文吉先生の治療を受けたのは「驚異の星状神経節ブロック療法花粉症鼻アレルギーを治す」という本がきっかけでした。慢性鼻炎に悩んでいた昭和課長、春先には花粉症で症状がひどくなります。この本を図書館で見つけ、著者の若杉先生が診療を行っていた三鷹の武蔵野病院を訪ねたのは、1995年ごろだったと思います。今の病院に改築される前の旧い建物でした。

先生に本を見せて「これを見て来たんです。」と言うと「そんな古い本まだあったか。」とおっしゃいました。

この治療は、首筋にある星状神経に微量の麻酔薬を注射し、交感神経を抑制するものです。ベッドに横たわって注射してもらった後そのまま、30分程度休みます。注射すると緊張が解け一気に血行が良くなります。リラックスしそのまま眠ってしまう人もいます。

これが、いろいろな不定愁訴の解消に効果を発揮するとして、評判になっていました。先生は新潟県出身で、同じく新潟出身の田中角栄元総理の顔面神経痛を治療したことでも有名でした。

社会的地位の高い方も患者として訪れているようでしたが、分け隔てなく気さくに対応してくれる優しい先生といった印象でした。

初めて治療を受けたとき、顔面から肩にかけて凝り固まった筋肉が一挙に緩んでいく感覚があり、鼻づまりも緩和された感じでした。衝撃的な体験で、これは良いと感じました。

広い病室に10床ぐらいのベッドがあり、横たわった患者に先生が次々と注射していき、患者はそのまま休みます。その間先生は一人づつ反応を見て回っていました。

その後、週一ペースで病院に通いました。リラックス効果は大きく、疲れに良いとは感じるものの、花粉症の根治には至りませんでした。また、初回に感じた劇的な効果も次第に慣れて薄れていくような感じでした。

待合室の患者さん同士も「初めての時はすごく効くんだよね。」「慣れると効きが薄れる感じがするけど、それでも、具合が悪くなった時に久しぶりでここに来て注射すると良くなるという安心感があるから助かるよ」といった会話をしていました。

この治療は病因に直接アプローチする外科治療のようなものとは対照的に、頭部の血流を良くすることで、因果関係のはっきりしない全身の不定愁訴を改善するといったものだと思いました。例えると温泉の湯治効果を短時間で体感できるといった感じです。

残念ながら、花粉症は完治しませんでしたが、症状の緩和には役立ちました。

多くの不定愁訴に効果を発揮するというメカニズムは良くわかりませんが、患者によりそい、少しでも生活の質を改善してあげようと、治療を創始した若杉先生の人柄は良く感じられました。

何度目かに今日の注射はあまり効かなかったと言ったら、先生は意味ありげな目でニッコリ笑ったのが印象に残っています。先生はお亡くなりになったようですが、今でも三鷹周辺にはお弟子さんと思われる医師の開業したペインクリニックが多いようです。

なお、当時病院の受付でも販売していた「星状神経節ブロック療法(ビタミン文庫)」が今でもアマゾンで入手できます。興味のある方はお読みになると良いと思います。

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