高配当株投資が人気の理由

この記事では、行動経済学等の知見をベースに高配当株投資に惹かれる心理について書いています。

無秩序で意味の無いもの、予測できないものは嫌い

人は予測できないことが多いと不安になります。見えないものに恐怖を持つようになります。そこで、無秩序で意味の無いものに意味を見つけようとします。

投資家なら、株価の「意味不明な動き」に翻弄された経験があるでしょう。業績を調べ、次回決算も間違いなく好調だと信じて仕込んだのに、好決算にもかかわらず暴落。こんなことが度々あって大損すると「株価は、わかんねーなー」。予測できない不安に耐えかね「もうヤーメタ」と投資を諦める人がたくさんいます。

キャピタル狙いの株式投資は予測不能なギャンブルと感じる一方、高配当株投資はかなり堅実で予測可能な世界と感じます。高配当で定評のある銘柄は需要の安定した製品・サービスを供給しており、キャッシュ創出力は抜群。○○年連続増配。無秩序どころかとても安心な投資対象と感じます。

これが高配当投資に惹かれる理由の一つです。

現実には2020年、石油メジャーが第二次大戦後初めて減配。AT&Tは2005年以来の増配停止、JTが減配等々、当面大丈夫と高を括っていたのに裏切られた。ということも起きています。株価が暴落して配当では当分埋め合わせができないケースもあります。

しかし、そうは言っても「タバコを吸う人はいなくならない。」「石油が不要になる時代は、まだまだ先」「通信インフラは欠かせない」「医薬品はディフェンシブで安心」等々、高配当株をもつ意味はわかりやすく、長期で見れば安心な投資対象という印象が強いですよね。

人間は思い込みだけで効果を得られる 思い込みに固着する固着性ヒューリスティック

2020年は米国高配当株投資+FIERが大ブームでした。

いま、日本で米国高配当株投資が人気になっている理由の一つは、出版ラッシュもあって、この投資法の宣伝に何度も触れた人が多いことです。人には「簡単に思いつくもの、何度もふれたものの効果・確率を高く見積もる」という傾向もあります。そして、いったん信じ込むと思い込みが固着する傾向があります。

いったん一つの考え方に固着すると自分の考えを肯定する都合の良い情報ばかり集め、反証材料を提示されても無視する傾向にあります。偽薬でも、本物の薬と信じて服用すると一定の効果がある「プラシーボ効果」は有名ですが、これも自分の思い込みに「固着する」人間の心理の現れの一種です。

本の内容に納得した人は、お勧めの銘柄でポートフォリオを組むと、もうFIERへの道筋はできたように感じます。「アンチ」がごちゃごちゃ言っても関係ない。「俺はこの投資法を信じる」という状態です。

著者の多面的な能力の高さや資金力等の前提条件が自分と大きく違っていても、そこにはあまり関心が向かいません。容易で再現性の高い投資法、「バカでもできる」という自分に有利な情報ばかりが印象に残ります。他の投資法でも同じことですね。

長期計画について。将来は管理できる?

高配当株投資のもう一つの魅力は、長期計画に相応しいと感じることです。受験勉強やスポーツで地道な努力と継続が実を結んだという成功体験を持っている人は、高配当株を買い続けていることが同じような努力に感じられていないでしょうか。

長期計画を立てると将来を管理できるように感じます。しかし、民間企業では3年程度の計画を長期経営計画と言っています。さらに1年ごとに計画を見直し、調整しています。それだけ金融市場や経済情勢は変化が激しいということです。同じことを頑なに繰り返すだけでは危機に瀕することになります。

個人の投資も同じこと。乱高下した時は長期保有に拘らず、いったん売って買い直してもいいはずです。以前の購入価格より安く買い直せば相場が回復したときの含み益はより大きくなり、配当も享受できます。当たり前のことですね。

高配当株投資は選択の一つです。自分の心理的な癖を意識しながら、常に変化に対応することを忘れないようにするのが賢明です。

以上、偉そうなことを書きましたが、昭和課長自身も市場に翻弄され、いろんな投資法を盲信したり、諦めたりしながら、なんとか市場に留まっています。

最後に座右の書「マネーの公理」から

必要な長期資産計画は一つだけ。それは金持ちになろうとする意志だ。金持ちになる方法など知る由もない。計画することはできないのだ。あなたはどうにかしてそれを成し遂げるしかない。

マネーの公理 マックス・ギュンター

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