はじめに
有名ユーチューバー「じっちゃま」こと広瀬隆雄さん。米国在住で豊富な経験をもとに米国株に関する情報を発信されています。マーケットを知り尽くした広瀬さんならでは。自分も参考にさせていただいています。この記事は広瀬さんの優れた知見はそれとして、個人投資家が「じっちゃま」の情報に群がる心理を「行動経済学的に」分析してみたものです。
社会的選考 人は自分勝手にものごとを決められない
伝統的な経済学では人は自分のことしか考えない超利己的な存在ということになっていますが、実際の人間は周囲の意見を取り入れたり、慮ったりします。常に他人を意識して他人と同じことに安心したり、違うことに優越感をもったりします。人は常に他人を意識して意思決定をしています。
いま、「じっちゃま」のTwitterをフォローしている人は数十万。「じっちゃま」の発信情報をダイジェストして発信している「ばっちゃま」のフォロワーは数万を超えています。米国株について相応の知見を持って情報発信している人が少ないうえ、英語の壁があるので自分で一次情報を取得し消化できる日本人の個人投資家は少数です。
ですから、「みんな」が集まる「じっちゃま」界隈こそ、いつも気になる「他人」を象徴する存在になっているわけです。「みんなは何を信じているか、みんながどんな情報を聞いているのか、みんなはどんな株を話題にしているのか」気になってしょうがないので「じっちゃま」の発信情報を見ずにはいられなくなるわけです。
確証バイアス 人は自分に都合の良い情報ばかり集める。
どんなに「じっちゃま」が優れていても神ならぬ身、株価予想が100%的中とはいかないでしょう。「じっちゃま」は、いろんな銘柄をとりあげます。その所見は「ちょっとした印象」だったり「方向感」を述べたにすぎないこともあるでしょう。絶対に上がるとか下がると言える人はどこにもいまぜん。
しかし、「じっちゃま」の話を聞いている多くの一般投資家は必ずしもそうは思っていません。「じっちゃま」がいうことは確実だと思い込みがちです。自分が保有している銘柄について肯定的なことを言われれば嬉しくなります。買おうかどうか逡巡している銘柄について「決算が良いから安心」といわれれば自信がつきます。
本当は「じっちゃま」が多面的な情報を発信していたとしても、自分の考えや思い込みに固着し、自分にとって肯定的な情報を勝手に集めてしまうのです。これを「確証バイアス」と言います。本当は自分に都合の悪い話もしてたとしても、そちらには関心が向きません。
米国株式市場や機関投資家の動向等について幅広く話している「じっちゃま」の情報の中には、たいてい自分に都合の良い話も出てくるので、それをどんどん集めて好きになっちゃうわけです。
時々「じっちゃま」に文句を言って絡んでいる人が「そんなこと言ってねーよ」と軽くいなされていることがありますが、自分の都合の良いところだけを切り取って理解してしまったということかもしれませんね。
アポフェニア 人は意味を探すことが大好き
人は無秩序で意味の無いものを嫌います。予測できないことが多いと不安になるのです。不安になると無秩序で意味の無いものに意味のあるパターンを見つけようとします。秩序があるものに対しては予測が簡単になり、複雑なことを考える必要が無くなり楽になります。無意味な情報の中から規則性や関連性を見出す知覚作用は「アポフェニア」と呼ばれます。
投資家は誰でも無秩序な株価の動きに翻弄された経験を持っているはずです。2020年はZoom Teslaで儲けた人もいたでしょうが、その激しい値動きに眠れなかった人も多いはず。誰でも多額の資金を投じていれば不安になります。
そんな時、「決算結果」を軸としてロジカルに企業の評価を説明してくれる「じっちゃま」が登場すると、無秩序な株価の動きに意味付けができるようになり、安心感がでてくるわけです。これもみんなが「じっちゃま」が好きな理由でしょう。
最後に
以上の内容は「じっちゃま」に限らず、ジム クレーマーや有力経済紙等でも同じこと。人はいろいろな心理的な癖を持ちながら情報に接しています。もちろん情報ソースには筋の良し悪しがあって、皆さんの支持を集めているものには相応の価値があるのでしょう。しかし、情報を消化するときには自分の癖を理解しておくことが大切です。
参考にしていただけでば幸いです。
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