賃貸VS持ち家、2026年に検証する──不動産高騰の恩恵は誰に届いたか

2020年に「賃貸VS持ち家」という記事を書いた。20年間の賃貸生活を振り返り、金融資産を積み上げてきた自分の選択が間違っていなかったかを検証したものだ。

あれから6年、不動産価格の高騰が加速した。「あのとき家を買っておけば大儲けだったのではないか」という問いに、あらためて向き合ってみたい。なお、以下で使用するデータは入手できる直近のもの(主に2025年末時点)に基づいている。

結論を先に書く。賃貸+金融資産運用という戦略の優位性は、2025年時点でも変わっていない。 それどころか、その選択が積み上げた金融資産が、予想より早く会社を辞めるという決断を支えることになった。


不動産は本当に急騰したのか

急騰は本物だ。国土交通省の「不動産価格指数」(2010年=100)によれば、2025年時点でマンション(区分所有)の指数は222まで上昇した。2020年時点の指数が約140前後だったから、この5年間で55〜60%上昇したことになる。

一方の株式はどうか。日経平均は2020年初に約23,000円、2025年末には50,000円を超えた。5年間でおよそ+119%だ。

つまりこの5年、株式も不動産もどちらも大きく上がった。ただし数字だけ見れば、株式の方が不動産を上回っている。


「不動産高騰」の恩恵は一様ではなかった

問題は、急騰したのが「どこの物件か」という点だ。

2019〜2025年の6年間で、都心・湾岸エリアのマンションは軒並み2倍超の上昇(麻布十番2.3倍、勝どき2.2倍など)となった。一方、川口・松戸・たまプラーザといった首都圏郊外は1.4〜1.6倍にとどまった。2025年の成約データを見ると、この傾向はさらに鮮明で、東京都区部の中古マンション成約価格は前年比+11%と上昇した一方、神奈川・千葉・埼玉の3県はいずれも前年比マイナスに転じている。

要するに、「不動産が上がった」のは主に都心・湾岸の高額物件の話だ。一般的なサラリーマンが家族のために購入した首都圏郊外のマンションの値上がり率は、株式の上昇には届いていない。

加えて、戸建住宅の上昇はさらに限定的だ。同じ指数で見ると、マンションの222に対し、戸建住宅は119にすぎない。郊外の戸建を持っていた人が「不動産高騰の恩恵」を受けた度合いは、想像より小さかったといえる。


それでも「買っておけばよかった」と言えるか

原記事(2020年)では、2001年に5,500万円のマンションを購入したと仮定してシミュレーションを行い、「賃貸+金融資産運用がやや有利」という結論を出した。

2025年時点でこれを見直すと、郊外マンションの上昇率から試算すれば、2020年当時40百万円だった物件は2025年時点でも44〜48百万円程度が現実的なレンジだろう。一方、同じ期間に株式市場は約2倍になった。賃貸を続けながら金融資産を積み上げてきた戦略の優位性は、この5年でむしろ強化された。


60歳になって、それでも賃貸を選んだ

2023年、自分は60歳になった。「終の棲家」を購入するタイミングは、いよいよ今ではないかとも考えた。しかし結論は、また賃貸だった。

海に近い街の公的賃貸マンション、70平米の1LDKに夫婦2人で移り住んだ。引越費用は約80万円。毎日、海岸を歩いている。

なぜ買わなかったのか。一言でいえば、「選択の自由を手放す理由がなかった」からだ。65歳まで働くつもりだったが、その後どこに住むかはまだわからない。賃貸を続けることで、その問いへの答えを先送りにできる。それが手持ちの金融資産によって可能になっていた。

2020年の「賃貸生活 老後は大丈夫?」という記事では、60歳時点での選択肢をプラン1〜4に整理した。地方取得、首都圏賃貸継続、中古購入、新築購入の4通りだ。実際に60歳を迎えてみると、金融資産は想定を上振れていた。選択の幅は、むしろ広がっていた。


そして、定年を待たずに辞めた

60歳で賃貸に引っ越してから2年ほど経ったとき、会社から早期退職の案内が来た。65歳定年まで勤め続けることに、実質的な障害はなかった。仕事もきつくなかったし、給料もそれほど悪くなかった。

それでも辞めることにした。

決め手の一つは、やはり数字だった。早期退職で「失う手取り」は1,000万円を切る程度と計算できた。その金額で、65歳までの数年間を自由な時間として買えるなら──健康な時間の値段として、惜しい金額ではなかった。

そして、その判断を支えたのが手持ちの金融資産だった。収入の空白期間を賄える資産が積み上がっていたから、数字が揃ったとき、答えは出ていた。

金融資産が想定より増えていた背景には、20年以上にわたる賃貸生活がある。住宅ローンという固定の出費を抱えなかったことで、相場の上昇局面で機動的に運用し続けられた。結果論ではあるが、これは賃貸という住宅戦略の副産物だったと思っている。


金融資産は腐らない

持家は老朽化する。住宅価格は変動する。しかし金融資産は、適切に運用していれば、どの時点でも「住宅を買う」「早期退職する」「移住する」といった選択肢を手元に残しておいてくれる。

2020年から2025年にかけて不動産が急騰したのは事実だ。ただしそれは都心・湾岸の話であり、郊外の一般的な住宅の話ではない。住宅ローン金利も上昇に転じており、これから持ち家を取得するコストは2020年時点より確実に高くなっている。

「普通のサラリーマンが、普通の場所に、普通の住宅を買う」という選択において、2025年時点で振り返っても、賃貸+金融資産運用という戦略の優位性は変わっていない。

そしてもう一つ付け加えるなら、賃貸を続けてきたことで、今も「次はどこに住もうか」と考える余白が残っている。これは金銭的な話だけではなく、人生の話だ。


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