不動産投資より賢い選択──JリートETFで家賃をまかなう

「賃貸より持ち家が有利」「老後のために不動産投資を」という声が絶えない。特にここ数年、サラリーマン層が実物不動産投資やその小口商品に関心を深めているように見える。インフレが進み、不動産価格が上昇するなかで、その気持ちはわかる。

しかし自分はその逆の方向で考えてきた。住宅は賃貸を続け、不動産には証券市場を通じて小口で関わる。具体的には、NISAを活用してJリートETF(証券コード1343)の分配金を家賃の原資に充てるという戦略だ。


実物不動産投資の本質を整理する

不動産投資が株式投資と根本的に異なるのは、借金によるレバレッジを当然の前提として組み込める点だ。自宅取得なら住宅ローン、投資用物件なら不動産投資ローン(アパートローン)と、いずれも融資を活用して自己資金を大きく上回る資産を取得し、賃料収入や値上がり益を狙う。金融機関も不動産担保があることで比較的融資しやすい。理屈の上ではこれは強力な武器になる。

だが問題がある。レバレッジは、最終的に物件を「高値で売り抜けられる」という出口戦略が確実である場合にのみ真価を発揮する。売却益でローンを回収できなければ、残るのは借金と劣化した資産だけだ。

ここで立ち止まって考えてほしい。自分が「住む」ための物件で出口戦略が成立するか、ということだ。自宅は売れば住む場所を失う。老後に値下がりした物件を手放せば、老後資金も目減りする。売りたいときに買い手がいる保証もない。前回の記事で確認したように、2020〜2025年の不動産価格の上昇は都心・湾岸の高額物件に集中しており、一般的なサラリーマンが購入した郊外物件の値上がりは株式の上昇率に届いていなかった。

「住むための家」と「投資としての不動産」は、本来別物だ。その区別を曖昧にしたまま「持ち家は資産」という議論を進めると、判断を誤る。


ではリートはどうか

実物不動産への直接投資に代わる選択肢として、リート(不動産投資信託)がある。リートはプロの運用会社が複数の収益不動産を取得・管理し、その賃料収入や売却益を投資家に分配する仕組みだ。

個別リートへの投資もできるが、自分が選んでいるのは**東証REIT指数に連動するETF(1343)**だ。理由は三つある。

一つ目は分散。個別リートは物件種別・地域・財務体質によってリスクがまちまちだが、指数連動型ETFは上場しているJリート全銘柄を対象としているため、個別銘柄リスクを自然に分散できる。

二つ目は流動性。株式市場で取引されるため、売買は株と同じ感覚でできる。実物不動産のように「売れるまで時間がかかる」「買い手が見つからない」という問題がない。

三つ目は透明性。リートは決算情報を開示しており、保有物件・賃料収入・分配金予想が外から見える。NAV(純資産価値)も算出・公表されているため、自分が何に投資しているかが把握しやすい。

ただし、Jリート市場には固有のリスクも存在する。まず市場規模の問題だ。東証REIT市場の時価総額は株式市場全体と比べて小さく、機関投資家の資金移動や金利変動の影響を受けてボラティリティが高まりやすい。次に物件の質の問題がある。リートの組成にあたってデベロッパーやゼネコン系スポンサーが収益性の低い物件を押し込むケースが過去に指摘されており、個別リートの物件ポートフォリオには目を配る必要がある。指数連動型ETFであればこのリスクは分散されるが、ゼロにはならない。また上場価格はNAVに対してプレミアムにもディスカウントにもなり、金利上昇局面では株価が軟化しやすいという特性もある。

こうしたリスクを踏まえたうえでなお、Jリートは為替リスクのない円建ての上場金融商品として、2001年の市場創設以来20年以上かけて着実に定着・成長してきた。分配金利回りが平均3〜4%台で推移し、分配金自体も長期的に増加傾向にあるという実績は、低金利時代を経た今も相対的な優位性を保っている。


1343の分配金実績──10年で1.6倍、利回りは平均3.6%

1343の年次パフォーマンスを整理すると次のようになる(1口あたり、税引前。利回りは前年末株価から算出)。

年末株価年間分配金分配金利回り
20252,181円87.6円4.90%
20241,790円82.9円4.25%
20231,951円75.0円3.68%
20222,036円71.8円3.23%
20212,224円70.5円3.69%
20201,909円73.2円3.19%
20192,298円68.8円3.63%
20181,895円65.3円3.68%
20171,776円61.5円3.13%
20161,968円54.6円2.94%
平均2,003円71.1円3.63%

※2026年4月現在の利回りは約4.5%(直近1年の分配金と株価から算出)

株価は年によって上下しており、コロナ禍の2020年や金利上昇が意識された2022〜2024年には下落している。しかし分配金はコロナ禍の2021年を除き10年間ほぼ一貫して増加しており、2016年の54.6円から2025年には87.6円と約1.6倍になった。株価が低迷する局面では利回りが上昇するという構造になっているため、長期保有を前提とすれば「高い利回りで買い増せる機会」と捉えることもできる。

過去10年の平均利回りは3.6%前後、直近2024〜2025年は4%超が続いている。定期預金や国債との比較では依然として高水準だ。


「家賃ヘッジ」としての発想

ここから「家賃ヘッジ」の発想が生まれる。

不動産価格が上昇すれば、賃料もいずれ上昇する。これは賃貸生活者にとって純粋なコスト増だ。しかしリートは不動産を原資産として持っているため、不動産市況が上向くと分配金も増加する傾向がある。つまり「家賃が上がる局面ではリートの分配金も増える」という相関関係が、緩やかながら存在する。

もちろん完全な連動ではない。賃料と分配金の間にはタイムラグがあるし、オフィスや物流施設など住居以外の用途が混在するJリート全体の動きと、自分が払っている家賃が必ず一致するわけではない。それでも、不動産市況全体の恩恵を受ける資産を保有しながら賃貸に住むというのは、「持ち家を買って不動産の値上がりに乗る」のと本質的に近い狙いを、はるかに少ないリスクで実現する方法だと考えている。


NISAとの組み合わせで分配金が非課税になる

もう一つの大きなメリットがNISAとの組み合わせだ。通常、リートの分配金には約20%の税金がかかる。NISA(成長投資枠)でETFを保有すれば、この分配金が非課税になる。

利回り4%の商品を課税口座で保有すれば手取りは約3.2%、NISAなら4%がそのまま残る。この差は元本が大きくなるほど、また期間が長くなるほど無視できない規模に膨らむ。インフレが進むほど、課税と非課税の差は広がる。


インフレ下での住宅戦略として

インフレ局面では、現金の価値は目減りし、実物資産は相対的に値上がりしやすい。だからといって、あわてて実物不動産に飛び込む必要はない。リートというかたちで不動産市況の恩恵に与りながら、賃貸で身軽に暮らす。住宅ローンという重荷を負わないぶん、金融資産の運用にも自由が利く。

自分の場合、1343を含むJリートETFと高配当株からの分配金・配当金を組み合わせて、家賃相当のインカムをまかなうという設計にしている。「毎月・四半期ごとに入ってくる分配金が家賃の一部をカバーしている」という感覚は、賃貸生活の心理的な安定にもつながる。

老後の資産形成として実物不動産投資を検討している方には、一度この発想を試してほしいと思う。管理の手間も、空室リスクも、多額のローンも抱えずに、不動産市況の恩恵を受け取ることは十分可能だ。


本記事はあくまで筆者個人の運用経験と考え方を記したものであり、特定の銘柄や商品への投資を推奨するものではありません。リートを含むすべての投資には価格変動リスクが伴い、元本が保証されるものではありません。投資の判断はご自身の責任において行ってください。

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