配当金と税金の知識、確定申告e-Taxで簡単に還付金受け取れます。

個人投資家なら知っておきたい配当金に係る税金の知識をご案内します。

多くの個人投資家は特定口座(源泉徴収あり)で取引しています。口座内取引については源泉徴収、売買損と配当金の損益通算、税金の還付が自動的に行われます。1つの口座だけで取引が完結している人は、何もする必要がありません。ただし、過去の損失との損益通算は自動ではやってくれませんので注意してください。

この記事は、複数口座で取引していたり、配当金の課税区分に悩んでいる人、各種控除や損益通算を利用して税金の還付を受けたい人のための説明です。

配当金の課税方式

配当金の課税方式には ①申告不要 ②総合課税 ③申告分離課税の3方式があります。

その概要は下図の通りです。(総務省 個人住民税検討会 令和2年9月18日資料1から抜粋)

総合課税と申告分離課税の比較

税金の還付を狙う投資家にとっては、まず「総合課税」と「申告分離課税」のどっちが得かということが論点になります。(税金の還付は不要、面倒なことはしたくないという人は、申告不要でも構いません。)

総合課税が得になる人

総合課税が得になる人の目安は次の通りです。

  • 課税所得が900万円以下の人
  • 損益通算できる株の売買損(今年の損失・過去の繰り越し損失)が無い人、または少ない人

目安になる900万円は「課税所得」です「給与額面」ではありません。各種控除後の「課税所得」が900万円を超えるサラリーマンは少数なので、ほとんどの一般人は総合課税がお得になります。

課税所得は900万円以下ですが、株の損がちょっとあります。損の金額がいくらなら総合課税より申告分離課税(損益通算)が得になりますか

e-TAXで確定申告するとき還付額・納付額を試算して比較できます。その時に決めればOKです。とりあえず、課税所得が900万円以下でも申告分離課税の方が得になる場合もあることも頭の隅においておいてください。

所得税(国税)と住民税(地方税)

総合課税を選択した場合の論点として、「住民税の課税方式をどうすべきか」ということがあります。配当金から源泉徴収される税金は所得税15%住民税5%ですが、この5%の部分の取扱についてです。

所得税と住民税とでは異なる課税方法を選択できます。しかし所得税を総合課税にして確定申告すると住民税も自動的に総合課税を選択したことになります。

それで何か問題があるんですか?

実は住民税は申告不要にした方がお得なんです。

総合課税や申告分離課税にすると総所得が増えて国民健康保険料が高くなる場合があります。また配当金にかかる住民税の実効税率は申告不要の5%にした方が総合課税より税率が低いんです。年金生活者で国民健康保険に加入している方は留意してください。
(国民健康保険料は「前年の1月~12月の所得」「加入者数」「年齢」をもとに計算しています。また、医療分・後期高齢者支援金分・介護分(40歳~64歳の方のみ)の3つで構成されています。それぞれに加入者の所得に応じて負担いする所得割額と、加入者一人ひとりが均等に負担する均等割額があります)

それなら、住民税だけは申告不要にしますわ。

申告分離課税と損益通算の組み合わせで源泉税を全額還付してもらうつもりですが、その場合も住民税は申告不要にする手続きをした方が良いですか?

現役の会社員で会社の健康保険に入っている人には影響ありません。保険料は給与に基づいて決められています。源泉税が全額還付される予定なら、あえて申告不要にして税率を下げる意味がありませんから手続きはしなくていいでしょう。

所得税と個人住民税とで異なる課税方式を選択できることは、平成29年税制改正で明確化されました。その概要は下図のとおりです。(総務省 個人住民税検討会 令和2年9月18日資料1から抜粋)

配当金にかかる住民税を申告不要にするには、確定申告とは別に各自治体に申告が必要です。手続きは特別区・市町村等のホームページで確認してください。

例 杉並区 世田谷区 武蔵野市

申告分離課税(上場株式等の譲渡損失との損益通算)

申告分離課税を選択すると、配当金から株の売買損を控除できます。差し引きできる売買損には今年の分だけではなく、過去の繰り越し損(申告してある3年分)も含みます。損益通算して源泉税がたくさん戻ってくる人は、総合課税にして「税率を下げる」よりも「損益通算」した方が得になる場合があります。

例えば、今年の配当金が100万円、去年繰り越した譲渡損失が100万円だとすると、差し引きゼロです。100万円に課された源泉税がまるまる戻ってきます。

(損益通算は複数口座間でもできます。配当金と譲渡損失の通算、譲渡益と譲渡損の通算が可能です。例えば、楽天証券で100万円利益、SBI証券で50万円損、マネックス証券で50万円損、という人も損益通算すれば利益ゼロになりますから源泉徴収されていた税金が戻ってきます。

口座がたくさんあって、損の口座も益の口座もある、配当金も少しある。こんな状況だと、総合課税と申告分離課税のどっちが得なのかわかりませんがどうしたらいいでしょう。

ですよね。

そんな人こそe-Taxに自分の所得を入力して還付額を試算してみるのがおすすめです。この計算ロジックは複雑で個人が手計算するのはとても難しいですから。

外国税額控除

外国株の配当金を受け取っている方は外国税額控除も利用できます。

確定申告とe-TaX

e-Taxのメリット

  • e-TaXを使うと還付(納付)税額の試算ができます。所得状況を入力したうえで、課税方式の選択ボタンを切り替えて還付金額を確認することができます。
  • 各種所得や利用可能な控除が複雑に絡んでいる人は、自分で手計算するのはとても難しいので、システムで確認できるのは大きなメリットです。
  • e-Taxによる確定申告の申告期間は1月4日~3月31日と通常より長いです。(書面申告は毎年2月16日〜3月15日)証券各社から「特定口座年間取引報告書」が届く1月中旬にすぐ申告作業を開始できます。1月中に申告すると書面申告が始まるころには、早くも還付金が受け取れます。
  • システムは24時間稼働しています。日中忙しい人は夜間でも作業できます。

e-Taxの初期設定

リンク先は国税庁 確定申告書等作成コーナー です。

初期設定が必要ですが、画面に従って作業できます。頑張ってください。

本人確認には次の2つの方法があります。

  • マイナンバーカード方式
  • ID・パスワード方式

ID・パスワード方式で利用するには①税務署に行って本人確認をしてID・パスワードを発行してもらう②パソコンでWEBからID・パスワードの発行を申込むのいずれかが必要です。②の場合は結局マイナンバーカードが必要になります。なので、初めからマイナンバーカード方式にするのがいいと思います。

ただし、過年度に税務署で申告を行った人はすでにID・パスワード方式の届け出をしたことになっている場合があります。この場合「ID・パスワードの届出完了通知」という書面を受け取っているはずです。この書面に記載されている利用者識別番号と暗証番号があれば、すぐにID・パスワード方式でe-TAXを利用することが可能です。マイナンバーカードもカードリーダーも不要ですからこれでもいいと思います。国税庁はID・パスワード方式はいずれ廃止するとしていますが、その時はその時で考えればいいでしょう。

マイナンバーカード方式ではカードリーダーが必要です。政府はデジタル化を推進していますから、今後迅速に行政サービスを受けるにはカードリーダーは頻繁に必要になると見込まれます。例えば、コロナ給付金もマイナンバーを使って申し込んだら、あっという間に振り込まれました。カードリーダーはSUICAの残高確認にも使えます。この機会に購入しておくことをお勧めします。

所得や控除情報等の入力

申告者の例
  • 給与所得者(年末調整済み)
  • 利用している証券会社は2社
  • 日本株の配当金あり
  • 米国株・ADRの配当金あり
  • ふるさと納税10先
  • 前年の「上場株式等にかかる譲渡損失」の繰り越しあり

入力項目と参照情報(各自に交付されている書類)の対応関係は下表のとおりです。

入力項目参照書類
給与所得源泉徴収票
株式等の譲渡所得特定口座年間取引報告書
上場株式等に係る配当所得等特定口座年間取引報告書
寄付金控除:都道府県、市区町村に対する寄附金(ふるさと納税など)ふるさと納税の寄付金受領証明書
外国税額控除特定口座年間取引報告書

配当金課税区分と税額の試算

e-Taxの入力画面には次のとおり選択ボタンが表示されます。

画面では次のように説明されています。

それぞれの課税方法を選択した場合の「所得税及び復興特別所得税額」(国税)については、全ての所得金額などを入力後、確認することができますので、配当所得の課税方法を変更するなどして、いずれの課税方法を選択するか決定してください。

所定の入力が済んだら、選択ボタンを切り替えて比較してください。

これは、自分の申告で「申告分離課税」を選択した事例です。

「総合課税」を選択するとこうなりました。

課税方式を変えただけで、還付か・納付か、逆の結果になりました。この事例では分離課税を選択するのがお得になると一目瞭然です。

なお、この申告例では申告分離課税を選択したうえで、「上場株式等にかかる譲渡損失との損益通算」、「外国税額控除」、「寄付金控除」が適用されています。還付はe-Taxで試算した通り、1月21日申告し、2月5日には入金になりました。

免責事項

記事の正確性には最善を尽くしておりますが内容に誤りがあっても責任は負いません。不明な点は税務署にご確認の上、各自の責任でご対応ください。

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