ジョンソン・エンド・ジョンソンの事業分離とタルク訴訟について

ジョンソンアンドジョンソンを巡る最近の話題を整理しました。

コンシューマーヘルス事業の分離

  • J&J は2023 年半ばから後半までにコンシューマーヘルス部門 の分離を完了する予定です。
  • 新会社名はKenvue(ケンビュー)、KVUEの証券コードでニューヨーク証券取引所に上場します。
  • コンシューマーヘルス部門の2021年の純売上高は151億ドル(2020年145億ドル)。2023 年の第 1 四半期の売上は38 億ドル、前年同期比 7% 以上成長しています。
  • 医療向け部門の2021年の売上高は約800億ドルで、コンシューマーヘルス部門を大幅に上回っていました。
  • J&Jはケンビューの普通株1億5120万株を1株当たり20―23ドルで放出し、最大35億ドルを調達する計画です。
  • 上場後もJ&Jがケンビュー株の議決権の少なくとも80・1%を引き続き保有する見通しです。

ケンビューのロゴです。

コンシューマーヘルスケアの主なブランドです。

バフェット太郎さんの動画です、最近のJNJについて語っています。後半で会社の分離がホルダーに及ぼす影響を説明されています。大変有益です。

タルク訴訟

ベビーパウダーに使用されたタルク(滑石)に含まれる発がん性物質アスベスト(石綿)をめぐる損害賠償訴訟に関しては、LTL Management LLC という子会社が対応しています。

LTL Management LLC (「LTL」) は、Johnson & Johnson のタルク訴訟に関連するすべての負債の保持と管理を担当する子会社であり、連邦破産法第 11 章(チャプターイレブン)によるすべてのタルクの法的請求の解決を目指しています。

同社ホームページのFAQには、チャプターイレブンを利用して訴訟の解決を図る趣旨が次のように掲載されています。個別の訴訟の解決に膨大な時間をかけるより、原告に対する債務を負う会社を設け、破産法による債務者への弁済の仕組みを使うのが合理的だという主張です。

チャプターイレブンがタルク訴訟を解決する最良の方法である理由は何ですか?

チャプター イレブンによるプロセスは、すべての当事者が解決プロセスに参加するための単一の場を提供し、個々の陪審裁判では達成できないような、包括的で公正かつ効率的な和解合意をもたらします。

LTLはすべてのケースを試す準備ができていますが、不法行為システムでタルクケースのすべてに個別に対処するには数十年かかります. それでも、すべてのケースが解決に至るという既知の決定的な結果や保証はありません。米国の不法行為制度は、何千もの事件を迅速または効率的に解決するための設備が整っていません。

破産法のプロセスは、誰もが合意を交渉するテーブルに着き、タルクに関連する法的請求を持っている人々に最も迅速かつ効率的な解決策を提供し、すべての当事者に確実性を提供します.

チャプターイレブンは、将来タルカム パウダーに関連する法的請求を行う可能性のある人々が、破産裁判所によって任命された「将来請求代理人」と呼ばれる独立した代理人を通じて解決に参加することを許可しています。その裁判所が任命した代理人は、将来の請求の数と公正な補償の総額を評価し、補償の分配方法を決定します。

タルク訴訟とケンビュー

ベビーパウダーを巡る発がん訴訟は「Kenvue」が引き継ぐことになりますが、その大半を占める米国・カナダの訴訟から生じる責任についてはJ&Jがその費用をすべて負担するとされています。

[4月27日 ロイター] – ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ.N)は木曜日、米国とカナダでの訴訟から生じたすべてのタルク関連の責任を留保することに合意し、新たに設立された消費者健康部門ケンビューにすべての費用を「補償」すると述べた。 

このニュースは、Johnson & Johnson (J&J) が新規株式公開で Kenvue の評価額を最大 429 億 5000 万ドルにしようとしているときにもたらされました。

今月初め、J&J は、ベビー パウダーやその他の製品に含まれるタルクが癌を引き起こしたと主張する数万件の訴訟を解決するために 89 億ドルを支払うことに同意しました。同社の当初の申し出は 20 億ドルでした

https://www.reuters.com/legal/jjs-consumer-unit-named-talcum-powder-cancer-claims-ft-2023-04-27/

自分はJNJ株を保有していますが、同社の一連の施策は適切だと思っています。

訴訟に関しては癌とベビーパウダーの因果関係を否定ししつつも、さっさと金で解決して区切りをつけようとしているだけで逃げているわけではありません。ケンビューの上場を成功させるために訴訟の負担を引き続きJNJが負い、ケンビューの評価額に悪い影響を与えないようにするのも妥当な方針です。ケンビューの時価総額が大きくなれば、JNJは今後株式の処分による資金調達も可能になり、賠償能力も強化されるわけですから原告にとってもいいことだと思います。

なお、事業分離については、こちらの英語の記事が参考になります。すこし難しいのですが興味のある方はお読みください。

本業が赤字の楽天が銀行子会社を上場させて資金繰りに充てるのとは違い、JNJでは医療向け事業もコンシューマーヘルス事業も順調です。JNJ・ケンビューともに今後も本業で潤沢なキャッシュフローを生み出すのは間違いありません。

ホルダーの皆さんには参考にしていただければ幸いです。

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