第13代米国連邦準備制度理事会(FRB)議長のアラン・グリーンスパンが若き日に心酔したというロシア系アメリカ人思想家にアイン・ランドという女性がいます。今でも政府高官、有力保守政治家・起業家に支持者多数と言われています。20世紀アメリカで聖書についで読者の人生に影響を与えた本とされる「肩をすくめたアトラス」の著者です。
女優のアンジェリーナジョーリーもランドのファンで、「無人島に持っていきたい一冊の本」にランドの小説を挙げ、これを理解できない男とは付き合いたくないと言ったとか。
日本人では河野太郎外相が米国留学中に原書でランドの小説「水源」を読んだそうで愛読書として紹介したことがあります。
東洋経済「トランプを支えるアインランド信者」
こちらが、アインランドの写真。ロシア革命後、アメリカに移住。
カネを作る人がもっとも尊敬され、それが美徳であると考えるアメリカ精神。そのバックボーンであるアイン・ランドの思想を端的に表現すると「利己的であることは道徳的に正しい」というものです。
日本人には長らく「カネもうけは卑しいこと」「自分のことしか考えないのはダメ」と考える傾向が強かったですが、その対極にある個人主義・能力主義を美徳と考える思想を実感として理解しておくことは米国社会の理解を深めます。
GAFAの創業者やテスラのイーロン・マスクは、アイン・ランドの小説の主人公のような人物たちです。日本にも孫さん、三木谷さん、似鳥さんがいます。
利己的の反対は利他的です。他人のために尽くす、私利私欲はない、公共心をもっている、ということは美しく道徳的であると感じられます。しかしランドは「利他的な人」の究極の姿は「奴隷」だと言います。
自由で活力のある社会は、優れた能力発揮と、それに相応しい報酬・成果をえることができる社会です。金持ちになりたいと思って利己的に頑張ることは、いいことなのです。社会への貢献はあくまでも自由で利己的な能力発揮の結果なのです。
難病の特効薬を開発した会社や研究者が巨額の利益を得ることを批判する人もいますが、リスクをとって膨大な開発費用を投じ、多くの優秀な研究者を集め、その結果得られた成果に報酬が無い社会が良い社会でしょうか。
コロナ禍でワクチンを開発できるのが民主的な先進資本主義国であり、ロシアや中国のワクチンよりイギリス、アメリカのワクチンの信頼性が高いのは、そういうことです。
私有財産を認めない社会では自らの能力発揮やその成果と報酬に頼ることはできませんから、権力者の施しに依存して生きなければなりません。誰もが利己的に生きることを否定され、公のために生きる利他的な奴隷になるしかなくなるのです。利己的に生きることは実は道徳的にも正しいのです。
当方、グリーン・スパンが現役のFRB議長だったころにランドのことを知り、アメリカの有力者の思考を理解したいと思い、小説を読んでみました。辞書のような厚さですが読み始めたら夢中になり、あっというまに読み切りました。「金儲け」にどこか「やましさ」を感じる人は読んでみることをお勧めします。
ということでアイン・ランドの小説を2冊、「水源」「肩をすくめるアトラス」をご紹介します。
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