本多静六(1866年~1952年)は、日比谷公園を設計した林学者、東京大学教授です。株式投資家、蓄財家としても知られています。地道な蓄財と投資で巨万の富を築き定年退官後は匿名で全財産を寄付したといわれています。
本多先生の著作「私の財産告白」は今でも投資家の間で蓄財の古典とされています。先生の素晴らしさは、当時の日本人の体裁主義を排し、お金のことに真剣に取り組んだことです。今でいう「金融リテラシー」の重要性をきちんと考えた、当時としては稀有な学者ですね。
手元にある本から引用させていただきます。(上掲写真は2005年実業之日本社発行版)
財産や金銭についての真実は、世渡りの真実を語るのに必要欠くべからざるもので、最も大切なこの点をぼんやりさせておいて、いわゆる処世の要訣を説こうとするするなぞはおおよそ矛盾もはなはだしい。
金というのは重要なものだ、ところが、世の中には、往々間違った考えにとらわれて、この人生に最も大切な金を頭から否定してかかる手合いがある。
投資の第一条件は安全確実である。しかしながら、絶対安全をのみ期していては、いかなる投資にも、手も足も出ない。だから、絶対安全から比較的安全、というところまで歩みよらねばならない。
私の財産告白 本多静六
この本を知ったきっかけは、保守派の論客として知られた上智大学名誉教授 渡部昇一先生(1930年~2017年)の著書の中での紹介でした。渡部先生は若いころにこの本に出会い、好きな研究を続けるにはお金のことにきちんと向き合わなければいけないことに気づいたといいます。「恩書」と言っています。
最近はお金の話を恥ずかしいことと考える風潮が後退し過剰なくらいみんなお金の話をするようになりましたが、ちょっと前まで「上等な人間は人前で金のことなど話さない」「金になど目もくれず、国家社会のために働くのが正しい生き方」というような価値観が表面的には支配的でした。
「私の財産告白」が有名ですが他にも「私の生活流儀」「人生計画の立て方」を著しています。
「私の生活流儀」には健康長寿法や暮らし方などがでています。
金儲けのできる奴はエライ。・・・不正でない方法、不正でない努力で金儲けに成功できるものは、どこかに常人の及ばないエラさがあると私は信ずる。
現在の自分の境遇は、常に過分であると感謝し、何事にも不平不満を抱かないようにした。・・・絶えず愉快にはたらきつづける。
人間は耄碌するから働けないのではなく、働かないから耄碌するのだ。
私の生活流儀 本多静六
「人生計画の立て方」では学校の選び方(秀才の場合・凡才の場合)、職業の選び方。結婚相手を選択する基準などに触れています。今の感覚からみると批判を浴びそうな内容ですが、真実をついていると思います。
配偶者選択の標準
血統が純潔であること
身体が強健であること
頭脳が明晰であること
(この3要件を絶対条件とし、以下の条件は望ましいが、これに重きをおいて、3要件をおろそかにしてはならない。としています。)
性質順良温和であること
高等教育を受けたものであること
容貌の美しいものであること
財産のあること
人生計画の立て方 本多静六
3冊とも、今に生きる言葉がてんこ盛り。ぜひお読みください。
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