ジョンソンエンドジョンソンのケンビュー分離は「スプリットオフ方式」

注目を集めたジョンソンエンドジョンソンの事業分離ですが、今回は当初想定された「スピンオフ」ではなく「スプリットオフ」という方式で実施されました。

何が起きたか理解しがたいという方も多いと思うので整理しました。

スピンオフとは

まず一般的な事業分離方式である「スピンオフ」についてです。バフェット太郎さんの次の動画が解りやすいので引用させていただきます。太郎さんは当初、J&Jの事業分離が「スピンオフ」方式で行われると想定してこの動画をアップしたと思いますが、現実には後述するスプリットオフ方式で実施されました。

この動画を見ていた人は「スプリットオフ方式」で事態が展開したことに困惑したと思います。

スプリットオフとは

「スプリットオフ」では新会社の株式の一部を親会社(既存企業)の株と交換します。今回、親会社(J&J)の株主には保有株とケンビュー株を交換できる権利(株式交換に応募できる権利)が与えられました。時価より7%ディスカウントしたケンビュー株と交換できるという条件が開示されJ&Jの株が一時上昇しました。

J&J株主は保有している株式の全部または一部を交換することも、一切交換しないことも可能でした。分離した会社の株式が親会社の株主に自動的に割り当てられる「スピンオフ」とは異なります

日本の証券会社経由では株式交換に参加できなかった

ところが日本のJ&Jホルダーは今回の株式交換に参加できませんでした。日本の法令で義務付けられている株式交換にかかる手続きが本邦では行われていないことが日本の証券会社が対応しない(できない)理由らしいです。

PayPay証券の「お知らせ」が日本の証券会社が提供した情報としては一番詳しいです。

【重要】ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)子会社の株式交換オファー(スプリットオフ)のお知らせ(取次不可)

2023.08.10

平素は格別のお引き立てを賜り、厚くお礼申しあげます。

2023年7月24日にジョンソン・エンド・ジョンソン社は同社のコンシューマーヘルス事業部門の子会社Kenvue Inc. (KVUE)のスプリットオフ(分離・独立)に伴う株式交換オファーを発表しました。

※Kenvue Inc.の株式は、ニューヨーク証券取引所に上場しております。

当社ではジョンソン・エンド・ジョンソン株式について、お客様からの本株式交換オファーへのお申込みいただくことはできません。本株式交換オファーに応じないジョンソン・エンド・ジョンソン株主に対する保有残高の変動及び分配はありません。

本株式交換オファーが成立し、交換されたKenvue Inc.株式が交換予定株数を下回った場合は、ジョンソン・エンド・ジョンソン株主に対し、比例按分方式により残存のKenvue Inc.株式が分配されます。

【スプリットオフ比率(予定)】

ジョンソン・エンド・ジョンソン株式1株に対しKenvue Inc.株式8.0549株を上限として、100 米ドル相当のジョンソン・エンド・ジョンソン株式を107.53USD相当のKenvue Inc.の株式と交換。

 (正確な交換比率は未定)

※本株式交換オファーに伴い分配されるKenvue Inc.株式の総株数の上限は1,533,830,450株。

【スプリットオフに伴う金銭交付について(予定)】

本株式交換オファーが成立し、交換されたKenvue Inc.株式が交換予定株数を下回り、比例按分方式により残存のKenvue Inc.株式が分配された場合、対象となるお客様については、約款・規定集「外国証券取引口座約款」第8条に基づき、弊社がお客様に代わり新会社株式を売却し、2023年8月18日基準※でお客様の保有されているジョンソン・エンド・ジョンソン社の保有株数に応じ按分計算した上で、お客様へお支払いいたします。

金銭交付を行うかどうかは本株式交換オファーの状況によります

※2023年8月18日(金)9:00(日本時間)までにジョンソン・エンド・ジョンソン株を買付・保有されているお客様が対象となります。

https://www.paypay-sec.co.jp/notice/20230810_1.html

応募は締め切られましたが、上限を上回る株式交換の申し込みがあったので、日本のJ&Jホルダーに金銭交付はありません。

J&J株主の損得?

J&Jホルダーにとっては理屈上、事業分離にかかる損も得もありません。

株式交換に参加しなかった(できなかった)株主にとって、KENVUEの企業価値が失われたのですから損したような気持になります。でも、株式交換に応じた人たちが保有していたJ&J株式が無くなる(償却される)ので、J&Jの発行済み株式総数はその分減少することになります。

株式総数が減少し希少になったJ&J株の価値が上がる分と、失われた企業価値が相殺し合うことになります。

とはいえ、実際の株価変動には多くの要因が絡んでいるため、この間の株価の動きが理屈通りだったと言えるのか何とも言えません。

J&Jは引き続き北米におけるタルク訴訟の責任を引き受けることになっているので、これが株価に影をおとしています。

参考にしていただければ幸いです。

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